面白い話から一発ギャグまでお笑いにおけるネタの種類はさまざまありますが、どんなネタに対しても、
「シュールだなぁ」
というコメントや
「ベタだなぁ」
という感想を漏らす人がいます。
この「シュール」と「ベタ」という考え方は感覚的に使っていることが多いですが、自分自身をこれらの言葉を正しく使えている自信がありません。
ということで、お笑いにおける「シュール」と「ベタ」ついて今一度考え直してみたいと思います。
ベタとシュールの意味について
本来ベタとシュールという言葉はお笑いに限らず様々なモノを形容する言葉です。
お笑いにおけるベタとシュールについて考える前に、まずは本来の意味を振り返って見ましょう。
ベタとは?
ベタとは本来「そのまま」という意味で使われた言葉です。
「そのまま」という意味から派生して「特別ではない」「ありきたり」という意味を持つようになりました。
ここからさらに派生してお笑い界隈では「面白くない」という意味としても使われる様になった様です。
シュールとは?
シュールとはすなわち、
非現実的・現実離れ
という意味になります。
もともとは芸術思想を表す「シュルレアリスム」を語源とした言葉で「超現実主義」という意味ですが、日本語でいうところの「シュール」は意味が少しことなっている様です。
1970年代から日本の各種広告媒体っで頻繁に使われる様になったことがきっかけで「シュール」という言葉が使われる様になりました。
「シュール」とは非現実的や現実離れという意味で使われることが多く、
「基本的にはあり得ないが、あったら怖いようなもの」
「現実をあり得ない形で皮肉したもの」
「実際に起きているが非現実的なもの」
という様な形で使われています。
笑いにおけるベタとシュールの違いとは
この様に本来の「ベタ」「シュール」という言葉は本来対照的なものとしては使われていませんが、お笑いにおいてはまた別の捉え方がされている様です。
そこで「お笑い」という角度からこれらの言葉を捉え直してみたいと思います。
お笑いの基本原理
お笑いの基本は、
急速に現れる「違和感」もしくは「納得感」
を与えるということです。
「なんだよそれ!」という違和感を感じる話や「なるほど!」と納得感を得れる様な話を聞いたとき、ついつい笑ってしまう経験があると思います。
面白い話から一発ギャグなどネタの種類はさまざまありますが、全てこの「違和感」や「納得感」を生み出す様に作られています。
例えば面白い話であれば、
より大きな納得感を聞き手に感じさせるために違和感のある描写をフリの部分で用意したり、
より大きな違和感を感じさせるためにフリ部分ではいたって普通・当たり前の描写をする
というフリオチの構造を作るのです。
ベタな笑いとは何か
語源を振り返ってみるとベタな笑いとは、
ありきたりの笑い
を意味することになります。
しかしお笑いの基本は急激な違和感や納得感を作るものなので、そもそも「ありきたり」ということでは笑いを生み出すことができません。
実はベタ(=ありきたり)な笑いとは、笑いを生み出すネタそのものが”ありきたり”ということではなく、笑いを生み出す形が”ありきたり”であることを意味しています。
あまりにも見え透いた三段落ちや天丼そして夢オチやお化けオチなど、聞き手側が「なんか同じ様なもの見たことあるなぁ」という感覚になる形をもったネタが、いわゆる「ベタな笑い」と言われるのです。
シュールな笑いとは何か
ベタな笑いが「ありきたりな形をもった笑い」ということであれば、シュールな笑いとはその真逆で、
聞き手側が「なにそれ!?」と感じるような、
形をはずした笑い
がシュールな笑いと言われるのです。
よく使われる「三段オチ」「天丼」などといった笑いの形を一切使うことなく、もっと言えば前述のお笑いの基本である、「納得感」「違和感」を作るためにフリとオチを用意する、という形すらも外していくのがシュールな笑いと括られるのです。
まとめ
今回はシュールな笑いとベタな笑いの基本について整理してみました。
単純に面白い話をすると考えると、シュールな笑いという考え方はあまり役に立ちにくいですね・・・
やはり自分はベタな笑いを突き詰めていきたいと思います。