面白い話の1つのジャンルとして、アメリカンジョークというものが存在します。
みなさんどこかで一度は耳にしたことがあると思いますが、いわゆる「すべらない話」には含まれず、漫才やコントと比べて日本の芸人さんからこの手の芸を聞くことは少ないです。
そんなアメリカンジョークとは何か、なぜ面白いのかについて考えてみたいと思います。
アメリカンジョークとは
アメリカンジョークというジャンルは、漫才やコント、すべらない話とは一風異るお笑いのネタですが、誰しもが何となくでしか理解していないと思います。
ネットで検索しても明確な定義は出てきません。
まずはこの「アメリカンジョーク」とは一体何なのかを事例を元に整理してみたいと思います。
アメリカンジョークの例
まずは、ネットで拾ってきたアメリカンジョークと言われているものをみてみましょう。
2週間もの間出張に行っていた旦那が帰宅した。
「おかえりなさい。あなた浮気なんかしなかったでしょうね?」
「するわけないだろう」
そして激しく愛し合う二人。
すると隣の部屋の男が怒鳴った。「毎晩毎晩、いい加減にしろーっ!」
これは、妻が2週間出張で出かけていた夫に対して浮気を疑う発言をしているが、最後の隣の人の発言で”毎晩うるさかった=夫が居ないのにも関わらず毎晩そういうことがあった”という事実が判明し、「いや浮気しているのは妻じゃないか」というツッコミが入るネタです。
ちゃんと行間を読まないと何が面白いか気づきにくいものです。
「どうしたんだ?そんな暗い顔をして」
「ああ…。実は俺、もうすぐ父親になるんだ…」
「本当か!おめでとう!でもなんで喜ばないんだよ?」
「妻にまだ話してないんだ…」
これは「父親になる」という一見喜ばしい話だが、父親になるはずの人が妻にまだ話していない、すなわち生まれてくる子供の母親は”愛人”である、というネタです。
前のネタと同様、ちょっと考えないとボケに気づきにくい構成ですが、わかってしまうと面白い、そんな構造になっています。
アメリカンジョークの特徴
今回紹介したネタは2種類だけですが、アメリカンジョークと言われるネタには以下のような共通点がありました。
- ネタ中にセリフが入っており、口調が外人っぽい
- オチとなる描写もしくはセリフで終わっていて、ツッコミは存在しない
- 行間をちゃんと読まないとオチの面白さに気づけない
アメリカンジョークというだけに、アメリカ人同士のやりとりがベースとなっており、ちゃんと考えると面白さに気づけるネタ、というのがアメリカンジョークというジャンルなのでしょう。
アメリカンジョークはなぜ面白いのか
上記のような特徴のあるアメリカンジョークですが、1つ1つのネタを聞くと確かについつい笑ってしまうものです。
ではこのアメリカンジョークは何が一体面白いのでしょうか?
笑いの基本構造
どんなジャンルのお笑いだろうと、笑いの基本は急速に感じる「違和感」もしくは「納得感」です。
ギャグだろうが面白い話だろうがコントだろうが、この違和感や納得感を聞き手に感じさせるために、フリとオチが練りこまれています。
アメリカンジョークは外国人の方が考えられたネタも多く、日本人が考えたものであっても場面や人物は欧米風に作られています。
そんな海外志向のアメリカンジョークですが、やはりこの「違和感」「納得感」という構造は当てはまります。
アメリカンジョークと納得感
アメリカンジョークの面白さはズバリ納得感でできています。
アメリカンジョークの特徴の章でも書きましたが、基本的にオチを理解するにあたって正しく行間を読む必要があります。
オチのセリフや描写の意味を一瞬考え、答えを出した瞬間の「なるほど!」という納得感こそがアメリカンジョークによる笑いの特徴でしょう。
内容によっては、「そんな展開あるわけないだろ!」という違和感を感じさせるネタもありますが、そこで笑うのは本筋ではなく、やはりなぞなぞやクイズのような「なるほど!」感を楽しめるのがアメリカンジョークの良さだと思います。
ただアメリカンジョークによる納得感は、他の種類の芸による納得感(あるあるなど)とは異なり「急速な納得感の想起」ではありません。
アメリカンジョークが芸人さんにほとんど取り上げられないのは、この辺りが問題なのかもしれません。
アメリカンジョークの作り方
ゆっくりと納得感を感じさせ笑いを取る
というアメリカンジョークですが、笑いのバリエーションとしては持っている方がベターではあるはずです。
というわけでアメリカンジョークの作り方を考えていきたいと思います。
ネタ全体で違和感を感じさせる
アメリカンジョークは聞き手側に納得感を与えるので、ネタ中の描写や会話は必ず違和感を感じさせる構成になるはずです。
前述のネタでも
「子供ができたはずなのに喜んでいない」「妻にまだ伝えていない」
などの描写は全て聞き手側にとっての違和感です。
これらが最後に解決することで納得感が生まれ笑いになります。
オチで違和感を解決しない
アメリカンジョークの特徴は、聞き手が一瞬考えた上で答えを出す、というクイズのような要素です。
ですので、オチ部分で直接的に解決させてはいけません。
例えばこんなアメリカンジョークがあります。
「ママ、イギリスって遠いの?」
「黙って泳ぎなさい。」
これは最後のセリフが、母子が泳いでイギリスに向かおうとしている、ということを暗示させて面白いのですが、
「ママ、イギリスって遠いの?」
「黙って早く行きなさい!」といって母はクロールを始めた。
だと謎解き要素が少なくなり、面白さは半減されます。
アメリカンジョークを作る場合、オチ部分は一瞬「つまりどういうこと??」となる程よい解決を用意するようにしましょう。
アメリカンジョークはいつ使うのか?
このようにシンプルのようで、なぞなぞのような面白さがあるアメリカンジョークですが、実際日常生活で使うシチュエーションは存在するのでしょうか?
最後にアメリカンジョークの使い方を考えてみたいと思います。
アメリカンジョークの欠点
アメリカンジョークについて色々考えてきましたが、日常生活で使っていくにはいくつか欠点があります。
- ネタが作り込まれすぎている。自然なトークではなく「ネタ」感が強すぎる。
- ネタの多くが登場人物の会話で成り立っているため、口頭で説明しにくい。
- ネタがウケるには聞き手の理解度の高さが求められる。
といったところが挙げられます。
これらの欠点はかなり致命的で、
ネタ感が強すぎるので会話の中から急にアメリカンジョークを始めても聞き手側がびっくりしてしまいますし、口頭で伝えにくいと会話に混ぜにくいということですし、せっかくうまいこと伝える場面ができても聞き手が「ん?・・・・ああなるほど。」と思ったより笑いが生まれない展開になりかねないということです。
やはり、残念ながらアメリカンジョークは平場(日常会話の中)の流れでは使いにくいのです。
オチを改変して使う
じゃあほんとに日常で使えないのか、
Twitterに書き込むくらいしか使い道がないのか、
とお考えかと思いますが大丈夫です。
改変して使えば平場の流れで使えるちょっとした面白い話に早変わりします。
会話を解説する
まずアメリカンジョーク内に含まれる登場人物同士の会話を口頭で解説できるようにしましょう。
その時は登場人物に名前などのラベルをつけると分かりやすくなります。
上記の例でも、「会社の先輩が体験した話なんだけど・・・」と、登場人物が全く無名の誰かではなく、多少聞き手側に近い想像の及ぶ人間の話にすると聞きやすくなります。
オチを分かりやすく
そしてアメリカンジョークはある種の”謎”で終わって聞き手側に解釈させるのが特徴ですが、これは聞き手側にウケを委ねてしまうので平場の流れに向いていません。
ですのでこれを分かりやすくしましょう。
最後にツッコミを自分で入れたり、短く解説を入れたりすることで、聞き手側もすぐに理解できるのでウケそこなうリスクを軽減することができます。
ただこれをやってしまうともはやアメリカンジョークとは言えなくなるかもしれません・・・
まとめ
今回はお笑いの1ジャンルであるアメリカンジョークについて考えてみました。
やはりアメリカンジョークをそのまま平場で使うのは難しいので、面白いネタが思いついてもTwitterにつぶやくくらいにしときましょう。