自分はよく最寄駅にある松屋で昼食をとる。
時には週に3度以上も行っている。
平日昼間の松屋はいわゆる場末感が漂っていて、ファミレスや定食屋では味わえない独特の空気を持っている。
それは「疲れた男の衆の空気」である。
いい意味でも悪い意味でも。
自分がよく行く松屋は住宅街の中にあり、オフィスが近くにあるわけでもないため、
平日昼間に訪れる客は、
・現場工事の方
・見込みのない客に訪問販売に来る営業マン
・有給をとった一人暮らしのサラリーマン
といったところだ。
(自分も含め)
その日はちょうどそんな人種が20席程度の店内を1つ飛ばし程度に埋めていた。
皆顔はどこか疲れている。
しかしそこに一筋の光が現れた。
20歳そこらの女子大生とみられる女性4人組が店に入ってきたのである。
およそ松屋とは縁のないような、いわゆるリア中の4人だ。
その4人は券売機の前で、
「何買う?」
「えーまようー」
という如何にもな会話を繰り広げる。
そんな「若い女性」がこんな男だらけの鬱蒼としたところに現れることはほとんどない。
そのため誰も言葉では表さないが、
明らかに店内の男たちがざわめいている。
そしてざわめいているということを皆が悟られないようにしている。
ちょうど1つ飛ばし程度にしか席が空いていないため、
4人組はせっかく入ってきたのにまとまって座れない。
すると誰からともなく、
食べ終わった人は席をゆずるように立ち上がり、
まだ牛丼が席に届いていない人は自然と席を詰め始めた。
「隣どうぞ」と言わんばかりに。
そんな男たちの思惑は知らず、女性の一人がチケットを定員に私ながらこういった。
「持ち帰りでお願いします」